今回はセルルック3Dアニメの発達がのちに与えた影響としてVtuberもあるでしょって話をします。これというのもVtuberがアニメをする「バーチャルさんは見ている」という作品が始まりまして、なんだか一周回ってきたという感覚が個人的にあったので書いてみようと思います。
Vtuberという存在が生まれた背景には絶対にセルルック3Dアニメの成立という文脈が欠かせないと思うのですが、なかなか言及されているものをみない(不勉強なだけかもしれませんが…)ので、ちょっとその辺を言及していこうかと思います。
2013年以前の3Dキャラ表現
2013年以前(蒼き鋼のアルペジオ以前)において3Dキャラというのはアクションシーン等における作画コストの圧縮といった面で利用されていることが多かった印象でした。例えばストライクウィッチーズの戦闘シーンやラブライブ(1期)のダンスシーンといったものがあげられます。
ここでは大きな動作の違いでキャラクターを表現されることはありましたが、二次元的な文法を応用したものではありませんでした。ゆえに3Dで表現された二次元キャラは作画で表現されたものより劣っているという認識がまだありました。
どちらかというと3Dキャラの表現は主にゲームにおいて出てきた印象があり、FFやメタルギア等々で割とリアルよりの3Dキャラ表現が先に突き詰められていました。これは2Dを3Dで表現することよりもリアルよりであるほうが3Dで表現しやすいということもあったのでしょう。
2013~2014セルルック3Dアニメの到来
2013年蒼き鋼のアルペジオ、2014年楽園追放といった作品が世に出ました。これらは全編キャラクターを3Dキャラクターで表現し、かつキャラ造形は既存の2Dアニメに限りなく近いというものでした。
3Dのキャラクターを2Dアニメのように見せるというのはそれなりにアニメ的演出を新しく導入することが多かったということが当時のインタビューを読んでも分かり、かなり革新的であったことは間違いありません。例えば楽園追放において水島監督のパンフレットのインタビューでは、日常シーンの演出において現実での動きをアニメに落とし込む際の見せ方や芝居の動作における止めの重要性を語っていたりします。
これらがセルルック3Dアニメの登場は当時かなりエポックな出来事でした。3Dで表現されたキャラクターがこれまで愛してきた二次元ヒロインとおんなじ文法で動き、かわいらしさが表現されていました。そしてこの後もRWBYが日本に上陸するなど、3Dだけで描かれる作品というのが受け入れられる下地になり、3Dで表現されたキャラクターが二次元キャラと遜色ない可愛さを表現できることが証明されたタイミングであったように感じます。
つまりこれらの作品が今から5.6年前に出てきたことは、現在Vtuberなどの3Dでモデリングされたキャラクターを視聴者がかわいいと思える萌芽だったんじゃないかと思うのです。この時に起きた3Dキャラに対する意識革命がVtuberの登場を用意したとも言えるのではないかと思うのです。むろん昨今の技術の進化でモデリングのしやすい環境とVR環境の整備ももちろん要素としてありますが、これまで広い層にVtuberが受け入れられたのにはセルルック3Dアニメという要素も絡まってきているのではないでしょうか。
もちろん楽園追放等がアニメ業界に残したものも多く、キャラクターを3Dで表現するという選択肢がとりやすい状況にはなったのではないだろうか。今期も荒野のコトブキ飛行隊はキャラクターも3Dだったり、ちょっと前だとハイスコアガールがあったように、2013、4年エポックな3Dアニメ作品群の影響は現在も残っているなと感じる次第です。
人間がアニメの世界で演技をするということ
そして2019年現在アニメとして「バーチャルさんは見ている」というものが放送されています。これらは既存のVtuberたちによるモーションキャプチャ技術で生まれた作品です。
これが前述した3Dアニメたちと違うのは3Dアニメが演出する側が演技をつけるのに対してVtuber自身が演技をしているということです。このポイントが巷でよく言われているバーチャルさんはアニメではないということにつながっていると思います。
というのもVtuberによる演技は未だにアニメの文法をインストールできていないのです。例えばバーチャルさんではキャラクターが何もしないとき、手を過剰にぶらぶらされていたりします。人間が演技しているためか手持ち無沙汰のときにどうにか動かないといけないと思ってのことかもしれませんが、これはアニメの演出における止めが全くできていないということで、止めができていないため派手に動くシーンも散漫になってしまい、集中して見づらいものになっています。
逆にVtuberが演技する際にアニメにおける演技のつけ方といったものを学べば、また違った作品になりえるのかなとも思います。動きのケレン味が増したり、効果的な止めの演技ができるVtuberが出てきたらもっと面白くなるんじゃないでしょうか。
まとめ
今回はちょっと前から遡ってくるお話をしたので、こういう要素が入ってないじゃないかという意見もあるかと思いますが、まぁそれは悪しからず。重大な事実誤認があれば、教えてもらえると嬉しいです。ぶっちゃけゲームの話はまとめて書くには難しく、おおざっぱなものになってしまってすみません。
そうそうここで思い出しましたがアルペジオは公式でMMDが作られたりしたので、本当にVtuberっぽい要素が多いなぁと思います。あとてさぐれ等々の話もしたかったのですが、存在する位置がとっても特殊なのでまた別の機会にやろうと思います。
最後ですが、今回書いたことが、今あるものへの新しい視座につながればいいなと思います
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